コヒステフ オマケ2<花菜時間 20x5年冬号 7頁 千家伊織先生へのインタビュー>


【花菜時間編集部(以下、「花」。)】
大連作の完結、本当におめでとうございます。
【千家伊織先生(以下、「千」。)】
ありがとうございます。
【花】
大きな業績を終えられて、ご感想は。
【千】
そうですね。思っていたよりは時間がかかりました。一つ一つの作品の制作は楽しんでやっていましたので、辛いということはなかったですね。百人一首という皆さんご存知の名作ばかりをテーマにするので、和歌の印象や余韻を壊さないよう、私なりに気を遣いました。
【花】
最終作の「K」は、一般からも業界からも特に評価が高かったですね。
【千】
ありがたいことです。
【花】
最後だけ上の句ではなくアルファベットにされたことについては、色々と憶測が飛び交っているようですが。
【千】
そのようですね(笑)。これについては、皆さんのご想像にお任せします。その方が世界が膨らんで楽しいでしょう?
【花】
なるほど。ところで、千家先生は独身でいらっしゃいますよね。
【千】
はい。
【花】
「K」の意味するところがもし、千家先生の想い人であるとすると、たくさんのファンが涙に袖を濡らすことになります。
【千】
さて、それはどうでしょう。
【花】
本誌読者の中にも、編集部にも、先生のファンは多いのです。
【千】
ありがとうございます。ですが、和歌には恋を主題にしたものが多くありますから、題材に扱う以上、それこそ恋のひとつも知らずに、面白みのある作品や共感を得る作品を生み出せるものでしょうか。・・・などと言うと、少し挑戦的かな。
【花】
ごもっとも。ということはやはり?!
【千】
さて、とだけ、申し上げておきましょう。

【花】
連作を完結されて、今までと変わったことは?
【千】
連作を終えて急に、というわけではありませんが、今回のものも含めたいくつかのライブ制作の動画がインターネット上にあるせいか、最近は街を歩いていると知らない人に振り向かれることが増えました(笑)。
【花】
声を掛けられることも?
【千】
増えてしまって、少し困っています。私は芸能人ではないので、あまり気にしないでいただけると嬉しいのですが。
【花】
千家先生はイケメンですからね。
【千】
滅相も無い。そういう風に言われて、実際に会って幻滅されるのは勘弁被りたいものです。
【花】
そのお言葉、全国の男性を敵に回しましたよ(笑)。

【花】
百人一首を題材に選ばれたのは、先代家元であるお祖母様との思い出がきっかけだったとか。
【千】
はい。祖母は厳しい人でしたが、文化面での教養は惜しみ無く与えてくれ、子供の頃から国内外問わず芸術作品に触れる機会は多分にありました。その中でも、やはり和歌は私の情操に強く影響を与えたもののひとつでしたので、手っ取り早く百人一首で百作やってみようか、と。
【花】
使用されたお花も和洋問わずですが、色にはこだわっていらしたのですよね。
【千】
ええ。日本の伝統色を使っています。やはり、日本人の感覚というか、目に見えるものではないけれど、何でしょうね、湿度のようなものを表現するには、あっけらかんとした色や、はっきりしすぎた色ではうまく行かないことがある。そこに伝統色を持ってくると、やはりしっくりくるように思います。必ずしも日本に古来からある花でなくても、色と形に違和感がなければ、頭の中に思い描くものに近づくようです。
【花】
そう言えば、千家先生の作品は、伝統的な華道だけでなく、フラワーアレンジメント的なものも多いように感じます。
【千】
そうですね。創始時から千家流は型を守ることより表現そのものを重視してきたところがあります。だからこそ特定の作法や決まり事があまりなくて、流派としての特徴が特徴として目立たず、無名であり続ける。
【花】
千家流を名乗る華道家は、千家先生以外にあまり聞きません。
【千】
そうでしょう。名乗るメリットがありませんから。私は、教室をやっている関係上、それなりに宣伝もしないといけないので、あえてしつこく名乗らせていただいていますが(笑)。


【花】
お教室も、自由な雰囲気なんですか?
【千】
そのつもりです。基礎はお伝えしますが、あくまで生徒さんがやりたいように生けていただいています。
【花】
では、出来上がりも人それぞれ?
【千】
そうです。ですから、教室の時間内に終わらない生徒さんも多くて、その辺りをどううまくやってもらうか、が毎回悩ましいですね。
【花】
生徒さんは、やはり女性が多いのですか?
【千】
そうですね。九割の方は女性なのではないでしょうか。
【花】
逆に、一割は男性。
【千】
ええ。また、ご年輩の方も多くいらっしゃいます。
【花】
若い男性は。
【千】
残念ながら多くはありません。ですが、最近学生さんが入ってくださって、生徒さんたちも喜んでくださっています。
【花】
若い方がいると、華やかになりますものね。先生も十分お若くていらっしゃいますが。
【千】
大抵、生徒さんより若輩ですから、いつも気が抜けません(笑)。
【花】
先生のご活躍を見て、これからは華道を始める男性も増えそうですね。
【千】
そうなってほしいものです。

【花】
最後に、今後の展開などお聞かせください。
【千】
今回百作品生けていく過程で、改めて己にとって花とは何であるかと考えるようになり、特に最後の「K」は、花に対して、人生に対して、どのように向き合っていくかという思考と、壬生忠見の歌の表現の模索との間に生まれた、思い入れの深い作品になりました。
ひとまずこれで連作はひと段落しましたが、次からはまた異なる方向から表現を追い求めていこうと考えています。華道家・千家伊織に、これからも期待していただけたら嬉しく思います。


終始甘いマスクに微笑を湛えながら質問に答えてくださった千家先生。お会いするのは初めてでしたが、作品だけでなく、ご本人のファンが多いことにも心から納得です。来年も当誌への作品掲載の協力を承諾していただいています。乞うご期待!(T)

  そつがない伊織先生でした。

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